<目次>
- 日本の読者へ
- はじめに 海はひとつ
- 第1章 太平洋 すべての海洋の母
- 第2章 大西洋 植民地支配のはじまり
- 第3章 インド洋 未来の海洋
- 第4章 地中海 ここから海戦は始まった
- 第5章 南シナ海 紛争の危機
- 第6章 カリブ海 過去に閉じ込められて
- 第7章 北極海 可能性と危険
- 第8章 無法者の海 犯罪現場としての海洋
- 第9章 アメリカと海洋 二一世紀の海軍戦略
- 謝辞
- 解説 米海軍の元高官がつまびらかに語る海洋戦略/奥山真司
- 参考文献および世界の海洋に関する推奨文献
アメリカ海軍大将であり、最後はNATO欧州連合軍最高司令官を務めた著者・ジェイムズ・スタヴリディス氏が、世界の七つの海、3つの大洋と4つの内海の地政学観点の歴史を氏の経験も交えて振り返り、中国・北朝鮮・インド・パキスタン・イラン・ロシアといった挑戦的な国々への対処といった現在の課題も含め、アメリカ海軍への提言を行います。
先の大統領選挙では、クリントン氏の副大統領最終候補者の一人として名前が挙がり、またトランプ政権成立時には、国務長官のポストを打診されたとのこと。人間性と地政学に対する洞察の両面で評価されてのことでしょう。
海軍トップ経験者が世界の歴史と現代をどうとらえているかを語ることは、すなわち、アメリカ軍当局が世界をどのように捉えているかを公開することに他なりません。中国による南シナ海侵出についても正しく認識しています。
【書評】『高校生にも読んでほしい安全保障の授業』~安全保障について理解が深まった : なおきのブログ
7月に衆議院を通過し、9月に成立した安全保障関連法。安全保障に関して、だいぶ国民の関心・理解が進んだのではないかと思います。本書は、ヒゲの隊長こと佐藤正久参議院議員が8月に上梓した本。まさに安全保障関連法案が検討する最中で、国民への説明が足りないのではないかという指摘があった時に出版されました。本書を読んで、理解が深まった点が2点あります。
naokis.doorblog.jp
また、NATOトップは、従来は陸軍出身者で占められていましたが、スタヴリディス氏は初めて海軍出身者として就任したとのこと。しかし氏に言わせれば、海の地政学を理解するには海軍経験者の知見が必要ということなのだろうと思います。
「シー・パワー」
アメリカだけでなくイギリスも世界覇権を確立できたのは、本書の原題でもある「シー・パワー」によるとしています。「シー・パワー」は、三つの要素と四つの要件から成ります。
「シー・パワー」の三つの要素
- 交易などの生産活動
- 民間と海軍による海上交通
- 植民地や同盟国などのネットワーク
「シー・パワー」の四つの要件
- 地理
- 海岸線の長さ
- 国民の支持
- 政府の性格
日本もイギリスと同様な地理的条件を満たします。江戸時代は鎖国していたため海外覇権は成り立ちませんでしたが、日露戦争に勝ったことでアメリカが脅威を抱いてしまったこともうなずけます。
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