一昨日、本ブログでもたびたび取り上げてきました大河ドラマ『軍師官兵衛』が終了しました。
- 【書評】『黒田官兵衛 作られた軍師像』2014年度大河ドラマの主人公(2013年11月30日)
- 『軍師官兵衛』がなかなかすばらしい(2014年8月2日)
- 黒田官兵衛~水の如く生きる(2014年10月20日)
- 『軍師官兵衛』ここに終わる~4つの名場面(裏切りと打ち明け)(2014年12月21日)
ややあっけなく終わってしまった「関ヶ原の戦い」ですが、この戦いを題材に、現代の政治・経済・社会を風刺してみようと思います。長文になってしまったので、目次をつけました。
<目次>
①戦国武将のソーシャルネットワーク活用
大河ドラマ『軍師官兵衛』では、ここまで散々石田光成が黒田官兵衛、黒田長政、福島正則、加藤清正らに露骨な嫌がらせ、敵対姿勢を見せてきました。憎まれっ子世に憚れなかった点が、光成に器量の限界でした。
一般的には、西軍の大将毛利輝元不出陣、小早川秀秋の裏切り、吉川広家のサボタージュなどにより、西軍が敗れたとされています。ドラマの中でも、東軍8万人に対し、西軍実質3万人と揶揄されました。西軍は寄せ集めに過ぎないから、お互い様子を見合ってしまったと言ってしまえばたしかにそうなのですが、寄せ集めなのは、東軍も同じです。
西軍・東軍の勝敗を分けた際立った違いとして、「ソーシャルネットワーク(社会的ネットワーク)活用の巧拙」を挙げることができるのではないでしょうか?
②徳川家康のソーシャルネットワーク(婚姻と手紙)
徳川家康は、豊臣秀吉の死後、諸大名たちと急速に婚姻関係を結んでいきました。Wikipediaで確認すると、伊達政宗、福島正則、蜂須賀至鎮、加藤清正、そして黒田長政の名前が挙がっています。親戚縁者になるということは、最も強力なソーシャルネットワークです。
また、小山評定後、福島正則・黒田長政ら東軍が関東から東海道を西上するに当り、徳川家康は江戸城に踏みとどまり、諸大名に160通もの手紙を出したと言われています。手紙もまた、ソーシャルネットワーク強化のための武器です。
③黒田長政のソーシャルネットワーク(既存の人脈をフル活用)
黒田長政もまた、父親譲りのソーシャルネットワークの力を十分に活用しました。
小山評定前には、豪傑福島正則を懐柔、評定での石田光成討伐の第一声を挙げさせることに成功しました。また、吉川広家・小早川秀秋をも謀略し、それぞれサボタージュ、寝返りをさせることに成功しています。
福島正則とは、幼少期の人質時代以来の仲。その後も幾たびも戦場を共にし、お互いの信頼関係が厚かったのではないかと思います。吉川・小早川両家とは、1582年の高松城攻め以来の仲です。特に小早川隆景の黒田官兵衛に対する信頼は厚く、秀秋に対し、黒田を頼るようにと言い残したとも言われます。持てる人脈を最大限活用できたと言えます。
④西軍の無策なソーシャルネットワーク
対する西軍のソーシャルネットワークはどうなのでしょうか?
- 盟友直江兼続を通じて上杉景勝を会津にて挙兵させるも、上杉の力を活用しませんでした。
- 大将毛利輝元は大坂から動きませんでした。
- 吉川広家のサボタージュ、小早川秀秋の寝返りを許してしまいました。
- 東軍側の豊臣恩顧の大名の切り崩しを行いませんでした。
黒田・福島・細川は、確かに石田光成を嫌っていました。しかし、自ら矢面に立たなくても、毛利輝元の名の下、外交僧・安国寺恵瓊を使って、それ以外の豊臣恩顧の大名に謀略の手を伸ばすという手もあったはず。家康や長政のごとく、ソーシャルネットワークを活用しようと努力したようには見えませんでした。
⑤大儀にはソーシャルネットワークが不可欠
この勝負、事前のソーシャルネットワークの有無で勝敗を決していたと言えます。
光成は豊臣のためという大儀を振りかざしましたが、多くの豊臣恩顧の大名は、その大儀になびきませんでした。もしその大儀が大切なら、一人ひとり説き伏せていくぐらいの努力は最低限必要でしょう。もちろん、事前に厚い信頼関係があれば、説得も楽になります。信頼関係がなければ、説得は困難になります。つまり、良好なソーシャルネットワークがあれば大儀は生き、ソーシャルネットワークが毀損していれば、大儀は相手に伝わりません。
元より、敵の多い、つまりソーシャルネットワークを持たない石田光成は、大儀を語る役割を演じてはいけない人でした。
<目次>
⑥選挙に見るソーシャルネットワーク活用の巧拙
この記事を書こうと思ったのは、ちょうど、衆議院議員選挙があり、自民党 vs. 民主党の構図が、家康 vs. 光成の構図と似ているなぁと思ったからです。
- 「早速、朝8時過ぎに投票を済ませてきました。」
“民主主義は最悪の政治体制である。これまでに試された他の全ての政治体制を除いては”
良くも悪くも、特に古くからの自民党議員は、地盤がありどぶ板選挙が得意です。つまり、ソーシャルネットワーク
を活用できる下地ができています。一方、民主党・維新の会・解党したみんなの党などに共通して見られるのは、自民党の議員よりも政策立案は長けているものの、果たして自身のソーシャルネットワークの下地ができているでしょうか?
⑦選挙の「お願い」はソーシャルネットワークがあるほうが有利
私の選挙区では、自民党の菅原一秀氏が五選を果たしました。
一秀氏は地元出身ということもあり、小学校の式典には必ず参加していますし、ラジオ体操にもよく顔を出しています。もちろん、駅前での演説も行っています。
対立候補の維新の会の候補(前々回は民主党から当選)は、前回選挙で敗戦後、今回の選挙で、政治活動をしていたのを見かけたことがありません。
選挙期間が始まると、街頭演説で、選挙カーで「投票のお願い」をされます。お願いをされたところで、よく知らない人に投票できるわけがありません。
⑧ソーシャルネットワークの埒外の無党派層を取り込む
自民党・公明党・共産党が強いのは、基盤となるソーシャルネットワークを持っているからです。一方、民主党・維新の会・解党したみんなの党の基盤は「無党派層」と言われいます。
しかし、「無党派層」というのは、どこのソーシャルネットワークにも取り組まれていない層ということです。民主党と維新の会の議員・落選した候補者がまずすべきは、政策立案能力を行うよりもまず、無党派層を取り込み、自身のソーシャルネットワークを築くことにあるのではないでしょうか?
⑨地道なソーシャルネットワーク作り
かつての民主党議員で現名古屋市長の河村たかし氏。私は、彼が日本新党から初当選した1993年の選挙を手伝いましたが、自分の選挙基盤を作るため、並々ならぬ努力をしている姿を垣間見ました。浪人時代から、人が来ようが来まいが、毎月欠かさずタウンミーティングを開催していました。当選後も、毎月、国政報告会を開催していました。
民主党の総理大臣だった野田佳彦氏は、彼の著書によれば、選挙区での辻立ちを欠かさないとのことです。私のお隣の選挙区では、長妻昭元厚生大臣が、よく駅前で立っているのを見かけます。握手をしたこともあります。
こうした継続的な努力ができる政治家は、選挙基盤が磐石なものになっていきます。今回の選挙で、民主党党首の海江田万里氏、元みんなの党代表の渡辺喜美氏が落選しましたが、果たして、河村氏・野田氏・長妻氏のような努力をしていたのでしょうか?
党勢にかかわらず自分の議席を守れるかどうかは、地道な努力・基盤作りをおいて他にないと思います。民主党・維新の会が、政権を担う政党を目指すのなら、所属議員・将来の候補に、政治基盤作りを徹底することが不可欠であるように思います。
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