<目次>

はじめに

第1章 過剰反応社会を象徴する現象

第2章 身近にもいる過剰反応な人々

第3章 過剰反応の心理構造

第4章 過剰反応を生み出す社会

第5章 過剰反応を防ぐために

おわりに


はずれを引いてしまいました。★★


ソーシャルメディアの普及等により、社会全体が小さな事象に過剰反応※していないか?という問題提起をしたのはいいのですが、本書もまた、過剰反応の例に対して過剰反応しすぎているようです。


※ネット上のバズワードとしては「炎上」


過剰反応の具体例


本書で取り扱っている「過剰反応」とは何でしょうか?

第1章の小見出しから、実例を列挙してみます。


  • ジャポニカ学習帳の表紙から消えた昆虫
  • 東京ガスの家族の温もりを伝えるCMが中止
  • 高校野球女子マネージャーへの批判
  • ベストセラーばかりが売れる
  • 個人情報保護への過剰な反応
  • 子どもの声がうるさいという保育園へのクレーム
  • 教師体罰への過剰反応により起きる隠蔽
  • 若者のおバカ投稿への過剰反応
  • ブラック恐怖症


評価を下げた理由


評価を下げた理由は、二つあります。1.本書自体が過剰反応であること、2.分析が浅すぎることです。


<本書自体が過剰反応であること>

目次構成を見ると、事象の説明は第1章のみということになっていますしかし、感覚的には、文章全体の7割りが事象説明に割かれており、しかも同じ説明が二度も三度も出てきます。前半で紹介した事象を後半で引用するなら、「先に説明したあの件」と短文で説明すればいいものの、その事象が起きた背景や起きた結果招いたこと、そのことに対する批判まで繰り返し書かれているため、過剰感をぬぐえません。


<分析が浅すぎること>

過剰反応の事象説明にページを割きすぎてしまっているため、分析が浅すぎます。というより、間違っています。本書で書かれている過剰反応する人を要約すると、だいたいこんな感じです。


  • 物事を多面的に評価することができない人
  • 自己愛を増長させ幻想的万能感を抱いている人
  • 自尊心が不安定な人
  • 人に期待しすぎて甘えの強い人


これは私もそう思います。

そして、その背景には、社会構図の変化を挙げています。


  • マスメディアの信頼低下
  • ソーシャルメディアという発信力の獲得
  • 常識の崩壊


このような社会構図の変化により、過剰反応する人が増加したとしています。


この著者の分析に対し、私はNOと言います。

社会が成熟化しているという視点を完全に見落としているからです。


社会の成熟化という側面


社会が成熟するとは一体どういうことでしょうか?本書では、そのことについて一言も触れられていないのが残念です。


<マズローの欲求段階説>

本書では、マズローの欲求段階説が一言も触れられていません。社会が成熟化し、生理的欲求・安全欲求が満たされれば、自己愛(自己承認欲求)の増長は当然の帰結となります。そのことを触れずに、自己愛を増長させた人が増えていること自体を問題視するのは、おかしな話です。自己愛の人の増加は、社会の成熟化により起きた前提条件としてとらえるべきです。


<価値観の多様化>

また、常識の崩壊について、本書はモラルの低下という側面で捉えていますが、価値観の多様化という側面を見落としています。価値観が多様化すれば、暗黙の了解事項が守られる保証がなくなります。1980年代以降、学校教育の現場では、自分の価値観を持つことが大切であることが教えられています。価値観の多様化も、社会の成熟化により起きた当然の帰結で、前提条件としてとらえる必要があります。


提言:寛容さ・共感・関係性構築を意図して取り組む


著者は、社会を劣化している部分のみでしか捉えておらず、著者の「物事を多面的に評価できない人=過剰反応の人」という定義によれば、著者もまた、過剰反応する人ということになります。


過剰反応が増加していること自体は私も賛成します。しかし、分析・提言すべきは、本書のように社会を一面のみで捉えて常識の崩壊を批判するのではなく、社会が成熟し、自己承認欲求が高まって価値観が多様化していることを受け止め、他者への寛容・共感・他者との関係性構築など、学校教育や社会全体(企業も含む)で取り組むことではないでしょうか?


かつてのように大家族や村はありません。企業も長期雇用を前提とした徒弟制度も機能しにくくなっています。ありとあらゆる学校が、ありとあらゆる企業や社会セクターが、寛容さ・共感・関係性構築を意図して取り組む必要がある、そう私は確信しています。



社会の成熟・承認欲求の高まり・価値観の多様化


書評読み比べ



うーむ。他の人の書評を読んで、ちょっとまずいなと思いました。本書の分析の欠陥に気づかず、本書に共感してしまっているようです。それでは問題解決にならないのに。。。



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