かねてより行きたかった天狼院書店に行ってきました。存在はかなり前から知っていたのですが、3月の夜の読書会MAX@品川で、シンさんより天狼院書店が出版している本の紹介を受け、俄かに興味を持っていました。6月12日は、午後に時間がありましたので、都電荒川線に乗って、行ってきました。都電雑司が谷で下車、徒歩1~2分の距離です。池袋駅からも歩けます。




棚割り


さて、天狼院書店に入ってまず感じたことは、思っていたより小さい、椅子やコタツなどの読書用スペースを取っていることもあり、通常の本屋さんと比べ、面積当りの本の数が少ないことです。さらに困ったことに、ぱっと見た感じ、棚割りが奇妙で、通常の本屋さんのようにジャンル別の棚割りになっていないことです。ただ、それは棚をじっくりと見ていくと、追々と分かってきました。


以下の写真2枚は、窓側に設置された本棚です。それぞれの格子内は一つのジャンルでかためられているのですが(例えば、サメの本、デザインの本、宗教の本、〇〇出版社の本など)、上下・左右の関係がよく分かりません、





その謎は、上の写真の左から3番目、上から2番目の格子に書かれていた説明書きにありました。ズームしたのが下の写真です。





つまり、この棚割りは、天狼院書店の顧客が作ったものです。2500円以上購入するとプレミアムカードが1枚貰え、そのプレミアムカードの枚数で毎月優先的に棚が割り振られます。それで、品揃えはどうするのかと聴くと、本を指定すれば、お店側で調達してくれるとのこと。


え?!それって客から見ると、棚割りがアトランダムになってしまい、買いにくくならないか、回転率が下がらないか?ということを危惧したのですが、棚主は、「部活動」の方などが競り落としており、買うのも、その部活動関連の方とか。


本を中心としたコミュニティ作り


「部活動」というのは、天狼院書店が場を提供した顧客同士のコミュニティです。ホームページによると、部活動の種類は次のようになっています。


フォト部、雑誌編集部、英語部、落語部、デザイン部、映画部、劇団天狼院、漫画編集部、旅部、ピアノ部、健康部。


彼らは隔週程度の頻度で集っているようです。


あぁなるほど。棚割りの謎が解けました。「部活動」という名のコミュニティをつくり、それを天狼院書店のファン(固定客)として取り込んでしまっているわけです。棚割りは、そのファン向けというわけです。


店の中には、店主・三浦さんが読みつぶしたという『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』が置いてありました。あちこちにマーカーが引かれています。天狼院書店は、まさにマーケティング=顧客の創造を取り入れた本屋さんでした。




棚を作る


こうしてあらためて書棚を見ると、それぞれの棚がそれぞれの思いを持った人たちが作っていることがわかります。棚を見ていると、棚を作った人の思いが「うわー」と差し迫ってきます。


ちゃんと撮ったつもりでしたが、ピンボケしてしまいました。


上の写真のコーナーは、本に関する本です。谷崎潤一郎や三島由紀夫の『文書読本』、ショーペンハウエル、『ビブリア古書堂の事件手帖』『文豪ナビ』など、読書をする人が間違いなく読むであろう本が置かれています。読書をしていないと、この棚はできません。後述しますが、書店業の衰退は、店主が自らの読書経験を活かした棚作りをしていないからです。



取り込まれました。


さて、私も見事に、天狼院書店に取り込まれました。天狼院書店は、店舗内を撮影し、SNSやブログでの拡散を推奨しています(もちろん、客や本の中身の撮影はNG)。こうして、天狼院書店のことをブログ記事に書くことになりました。


また、天狼院書店とその顧客が作成した雑誌『READING LIFE』を買ってしまいました。この本はここでしか買えません。黒い装丁の本はシンさんが持っていたので、別の本を選びました。中身は事前に見れません。まだ開封していません。次の読書会まで、開封&披露しようと思うので、それまで封印しておきます。


店員さんに撮影してもらった。手に持っているのが『READING LIFE』。

天狼院書店にて-2015年6月11日


街の本屋さんの衰退


出版業界が衰退していると言われて久しいです。本の売上のピークは1995年ごろで、それからずっと右肩下がりです。『デフレの正体』に書かれたように、生産人口の減少が原因であって、決して「若者の読書離れ」が進んでいるわけではありません。


そして出版業界全体の縮小よりさらに速いスピードで街の本屋さんの数は減っていっています。私が現在のところに引っ越してきたのは11年前でした。最寄り駅のこちらとあちらに1店舗ずつあった本屋さんは、今はもうありません。


本屋の衰退の原因として、ブックオフなどの新古書店の台頭、セブンイレブン等のコンビニの台頭、Amazon等のネット販売の台頭が原因と思われがちですが、『だれが「本」を殺すのか』では、それらは原因ではなく、主な原因を(1) 出版社・取次・本屋の流通の仕組みと(2) 本屋の怠慢にあるとしています。


本屋の怠慢というのは、先に述べた「店主が自らの読書経験を活かした棚作りをしていない」ことです。そんなバカなと思うかもしれません。


だれが「本」を殺すのか
佐野 眞一
プレジデント社 ( 2001-02 )
ISBN: 9784833417167


街の本屋さんが堂々と戦う方法


この『だれが「本」を殺すのか』が出版された2001年のことだと思いますが、編集を務めたプレジデント社の通称びな氏に本屋の棚作りの話を聴いたことがあります。当時、それほど読書をしていませんでしたので、「棚作り」と言われてもピンと来ませんでしたが、今はちゃんと考えて作られた棚とそうでない棚の違いがよく分かります。


現在、本というのは、年間8~9万冊出版されます。通常の本屋さんにとって、その中から売りたい本を選んで卸してもらうのではありません。毎週、卸商である取次がその週に出版された本を配分して本屋さんに一方的に送りつけ、本屋さんがその中から選択して本棚に並べ、残りは取次に返品する、そういう仕組みになっています。


なので、「店主が自らの読書経験を活かして棚を作る」というのは、実はものすごく大変なことです。しかしこれこそ、顧客起点に立ったビジネスそのものです。街の本屋さんが衰退した原因は、顧客を忘れたビジネスをしていたからと『だれが「本」を殺すのか』の著者・佐野眞一氏は分析します。私もそう思います。


Amazon、コンビニ、ジュンク堂などの大手チェーンなどを敵に回して、街の本屋さんが堂々と戦う方法を、私は天狼院書店に見ました。まとめると、こうなります。


  1. コミュニティを作り、ファンとして取り込むこと
  2. コミュニティのための棚を作ること


そして、人口減少社会に突入した日本において、すべての業界に言えることだと思います。


「俺の棚がほしい」


さて、棚割りの真髄を知ってしまうと、「俺の棚がほしい」。


当ブログでも、数多くの書評を書きました。これからももっと書きます。過去の書評を読み直しても、われながら大変秀逸な書評もあります。Amazonのアフィリエイトリンクを貼ってありますので、書評の人気状況なども分かります。そうすると、この書評に連動した棚が欲しくなります。



もちろん、私の書評だけでは微力です。しかし、私が参加している読書会界隈の人たちの叡智を結集すれば、それなりの棚ができるのではないかと思います。


読書会のみなさん、いかがでしょうか?




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