明治時代に英語で日本を紹介した代表的な三冊、新渡戸稲造(著)『武士道』、内村鑑三(著)『代表的日本人』そして岡倉天心(著)『茶の本』。
本書は、文語体で書かれた天心の『茶の本』を現代風にアレンジして意訳した本です。年末の朝活読書サロンで紹介を受けました。二十一世紀からのカフェ文化の隆盛、カフェラテ人気は、茶室・お茶に通ずるものがあるとのことです。天心の『茶の本』を読めば、現代日本の世相への洞察が深くなるでしょう。
『茶の本』は一度読んだことがありますが、その時まで抹茶が先に普及しそれから煎茶が普及したという日本のお茶の歴史を知りませんでした。また、その時のメモを見ると「やや難解。理解するには再読が必要か。」とあります。よって、私にとっては再読が必要な本でした。
そんな風に私が悪戦苦闘した『茶の本』ですが、本書の著者(抄訳と文)川口葉子さんは、中学生の時に読んでいて、天心の言葉である「自分自身が美しくなければ、美しいものに近づく視覚はない。」と日記に認めていたそうです。さすがに今となっては、なぜそう思ったのかを思い出せないそうですが、私が難解だとギブアップしかけた本を中学生の時分に『茶の本』の真髄を的確に捉えていたとは恐れ入ります。
茶道。それは
日々の雑多なものごとの中に
ひそむ美しさを
深く愛すること。(p11)
茶道とはすなわち、日々の生活の中に美を見いだすことであると天心は述べます。会話、心持ち、服装、身のこなしなど生活のすべてにおいて美しくふるまうこと、それが「自分自身が美しくなければ」という言葉に続きます。
ふと、2007年、ドイツからの来客を京都の金閣寺の茶室でもてなしたことを思い出しました。2020年、東京オリンピックが開催されます。この日本人の美しい心情、所作をあらためて身につけ、海外からの来客をおもてなししたいものです。
<目次>
- 『ほんのお茶」の味わいかた
- THE BOOK OF TEAと岡倉天心
- 第一章 一杯のお茶の中に
- 第二章 お茶の歴史
- 第三章 タオイズムと禅
- 第四章 茶室
- 第五章 アートと向き合う
- 第六章 花
- 第七章 茶人
- あとがき
- 文庫版あとがき
- 参考文献&おすすめの本
<茶話>
- 茶話1 壺中日月長
- 茶話2 街角のお茶をめぐる風景
- 茶話3 からっぽのうつわ
- 茶話4 二十一世紀のカフェのインテリアと茶室
- 茶話5 ゆっくりと、待つという力
- 茶話6 花を看取るひと
- 茶話7 天心の最期
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