撤退戦略はあったのか?
本書で「戦争責任」という言葉は使っていませんが、半藤一利氏の言葉を借りながら、当時の政治を批判しています。
「敗戦を覚悟した国家が、軍が、全力をあげて最初にすべきことは、攻撃戦域にある、また非占領地域にある非戦闘民の安全を図ること」
「その実行である。・・・日本の場合は、国も軍も、そうしたきびしい敗戦の国際常識にすら無知であった」(半藤一利『ソ連が満州に侵攻した夏』
(中略)
異国、異民族とまじりあった長い歴史を自覚する国々(ひとびと)と、「単一民族」を誇り、島国であった国の偏見、国際感覚の欠損を感じる。
責任者は処罰されたか?
そして満州開拓を推し進めた加藤完治の無責任さを批判します。Wikipediaを見ると、加藤は責任を問われることなく、戦後も生き延びています。
半藤氏の本、野中郁次郎氏らが著した『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』を見ても、日本軍は、撤退が下手ですし、また、山本七平氏が批判したように、責任者に責任を取らせないのも、日本組織の悪しき文化です。
戦争を起こさないために、集団的自衛権等の安全保障上の策を講じておくのはよいとしても、いざ非常時になると、机上の作戦通りにはうまくいきません。
- 退路も考慮した戦略・兵站
- 失敗した際には責任者に相応の処罰
を考慮しておく必要があるのではないでしょうか?先月成立した安全保障関連法案では、こうした撤退戦略や責任者の処罰のあり方も、規定されているのでしょうか?この、撤退戦略と責任者の処罰の欠如によって、往々にして企業も失敗しているように思います。
<目次>
- 少女の行程
- 澤地家家系図
- 吉林市の街中の地図
- はじめに
- 第一章 十四歳の少女
- 第二章 秘密
- 第三章 王道楽土
- 第四章 戸籍謄本
- 第五章 学徒動員・無炊飯
- 第六章 水曲柳開拓団
- 第七章 八月十五日・敗戦
- 第八章 いやな記憶
- 第九章 蟄居の日々
- 第十章 内戦下
- 第十一章 旧陸軍兵舎
- 第十二章 日本へ
- おわりに
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