デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング) ( 2010-06-10 )
ISBN: 9784047102330


なぜもっと早く読まなかったのだろうか?


そう後悔させられた本2013年ナンバーワンです。

出版された年に読んでおくべきでした。(反省)


明日、著者の藻谷氏にお会いする機会があるために、藻谷氏の『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』を読んだ際、ついでに本書も読みたくなった次第です。


『デフレの正体』の書評記事


すでに読まれている方も多数おられますし、書評もちまたにあふれていますので、通り一辺倒の書評を書いても仕方ありません。ここでは、私が所属している企業間フューチャーセンターとZESDAの視点を中心に、以下の視点で書いてみます。長文をご容赦を・・・


  • 経済指標の誤謬
  • 多様な個性のコンパクトシティたちと美しい田園が織りなす日本
  • ハイテク製品よりも軽工業製品


<目次>

まえがき

第1講 思い込みの殻にヒビを入れよう

第2講 国際経済競争の勝者・日本

第3講 国際競争とは無関係に進む内需の不振

第4講 首都圏のジリ貧に気づかない「地域間格差」論の無意味

第5講 地方も大都市も等しく襲う「現役世代の減少」と「高齢者の激増」

第6講 「人口の波」が語る日本の過去半世紀、今後半世紀

第7講 「人口減少は生産性上昇で補える」という思い込みが対処を遅らせる

第8講 声高に叫ばれるピントのずれた処方箋たち

第9講 ではどうすればいいのか① 高齢富裕層から若者への所得移転

第10講 ではどうすればいいのか② 女性の就労と経営参加を当たり前に

第11講 ではどうすればいいのか③ 労働者ではなく外国人観光客・短期定住客の受入を

補講 高齢者の激増に対処するための「戦中八策」

おわりに 「多様な個性のコンパクトシティたちと美しい田園が織りなす日本」へ

あとがき

経済指標の誤謬


本書は「正体」を暴く類の本であるわけですが(笑)、「正体」と呼んでいる以上、「世間のデフレ評は正体を表していない」とするどく批判している本なわけです。


一言で言えば、正体を見破るには「比率」ではなく「絶対数」を見よということです。


  • 比率指標:出生率・高齢者率・就業率・失業率
  • 絶対数:出生数・高齢者数・就業者数・失業者数


たとえば、1990年代のバブル崩壊後、「不景気」により失業率が上昇したのにもかかわらず、個人消費は伸び続けました。実際にほとんどの個人消費の指標のピーク(書籍販売・ビール出荷量・百貨店売上等)は1996-1998年に迎えます。2000年代半ば、失業率が低下し輸出が増大し景気が回復したと叫ばれていたのにもかかわらず、実感が沸きませんでした。事実、2000年代を通じて個人消費はどんどん下落していきます。


なぜならば、1996-1998年の個人消費のピーク、2000年代以降の個人消費の落ち込みは、単純に就業者数(あるいは生産年齢人口=15~64歳)に比例するからです。


最近の若者は自動車を買わないから自動車販売台数が減少しているのではなく、そもそも論、生産年齢人口が減少しているから自動車販売台数は減少します。2010年代に入っても、60代で引退する人の数が20歳前後で社会人デビューする人の数よりも多いわけで、この後少なくとも20年近くは、日本の生産年齢人口は減少し続けます。ゆえに個人消費はますます下落基調にあります。


これが本書で言うところの「デフレの正体」です。


もちろん手をこまねいているわけには行きません。著者の回答は本書の第9講~第11講に書かれていますのでご参考ください。


人口推移

戦後から約50年かけて倍増した生産年齢人口は、次の50年をかけて半減する。

総務省統計局ホームページのデータより筆者作成


多様な個性のコンパクトシティたちと美しい田園が織りなす日本


この命題は、本書の「おわりに」に簡単に触れられているだけで、深い説明はありませんでした。実は、この命題に対する藻谷氏の回答が、最新刊の『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』です。この二冊を合わせて読むと、地産地消がなぜ必要なのか、食糧自給率のみならずエネルギー自給率の観点でも深く洞察できます。


すでに書評を書いてありますので、そちらを参照ください。




ハイテク製品よりも軽工業製品


さて、ここからは私が所属しているZESDAのために書きたいと思います。そのうちの一つ、ZESDAは輸出産業を創造することを標榜しています。


「軽工業製品の高級ブランド化を目指せ」


というのが本書の提言の一つです。


日本は全ての新興国と呼ばれる国、中国、台湾、韓国、シンガポール、インド、ブラジル、ロシアに対し、貿易黒字です。そして、多くの先進国、アメリカ、イギリス、ドイツなどに対しても黒字です。もちろん、サウジアラビア、アジア首長国、インドネシアなどの産油国に対しては貿易赤字です。


そしてあらためて気づいたのですが、フランス・イタリア・スイスに対しても貿易赤字です。


なぜでしょうか?


軽工業製品の高級ブランド化を目指すということ


日本は全ての先進国・新興国・産油国に対し工業製品を輸出しています。もちろん、フランス・イタリア・スイスにも輸出しているでしょう。しかし、日本はこの三ヶ国にそれ以上を輸入しています。フランスのルイ・ヴィトン、シャネル、エルメス、イタリアのアルマーニ、グッチ、フェラガモ、スイスのオメガ、スウォッチ、タグホイヤー。数えたらキリがありませんが、決してハイテク製品ではなく、繊維・皮革などの軽工業製品や職人による家内工業製品です。


日本も軽工業製品はたくさんあります。しかし海外まで名前が響き渡るようなブランド製品はまだまだ少ないです。


本書を読んで、ぐっときたところを引用します。


日本の一部男性の大好きなハイテク製品よりも、日本女性の大好きなブランド付き軽工業製品の方が、バッグでもショールでも、申し訳ないけれども値段が高いのです。

日本は、中国に任せるものは任せ、フランス、イタリア、スイスを追って高級品分野にシフトしていくべきなのです。

我々が目指すべきなのは、フランスやイタリアやスイスの製品、それも食品、繊維、皮革工芸品、家具という「軽工業」製品に「ブランド力」で勝つことなのです。


Girls in kimonos

出典:Wikipedia ccライセンス


伝統工芸品を高級ブランド化できないだろうか?


高級ブランド化を目指すには、大量生産から多品種少ロット生産に移行せねばなりません。本書には具体的な処方箋は書かれていません。しかし、日本が国を挙げて取り組まねばならない課題だと思います。


たとえば、伝統工芸産業は衰退の一途をたどっています。たとえば伝統工芸品を高級ブランド化できないものでしょうか?



同様のことは、大前研一氏や奥山清行氏も主張していますので、関連書籍を紹介しておきます。実際に奥山氏は南部鉄瓶の高級ブランド化に挑戦しています。



ブログ記事がありますので、そちらを参照下さい。



世界がその町なしにはやっていけない、というほどのポールポジションを獲得した市町村が日本にあるだろうか?新潟県燕市は数少ない事例だろう。こうした町が全国で1500くらいあるのがイタリアだ。


「なおきの本棚」に読書メモがありますので、参照ください。


南部鉄瓶

奥山清行氏は南部鉄瓶の高級ブランド化に挑戦している。

出典:Wikipedia ccライセンス


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