生物から見た世界 (岩波文庫)
ユクスキュル, クリサート
岩波書店 ( 2005-06-16 )
ISBN: 9784003394311

<目次>
  • まえがき
  • 序章 環境と環世界
  • 一章 環世界の諸空間
  • 二章 最遠平面
  • 三章 知覚時間
  • 四章 単純な環世界
  • 五章 知覚標識としての形と運動
  • 六章 目的と設計
  • 七章 知覚像と作用像
  • 八章 なじみの道
  • 九章 家と故郷
  • 一〇章 仲間
  • 一一章 探索像と探索トーン
  • 一二章 魔術的環世界
  • 一三章 同じ主体が異なる環世界で客体となる場合
  • 一四章 結び
  • 訳者あとがき(日高敏隆)


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すでに二回の読書会で紹介した本書。二つの紹介をリライトし、再紹介します。


本書との出会いは、三宅陽一郎さんが進行役を務められた「『人工』知能と知能を考えるための61冊」を読む #2。彼がその61冊の中で真っ先に紹介している本です。人工知能を考えるには、まずは生物を知ろうということだと思います。


進化論と相対性理論

本書は、生物学の古典です。ダーウィンの『種の起源』、ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックによる二重らせんの発見、ドーキンスの『利己的な遺伝子』。本書の原著の初版は1933年。舞台はドイツ。そう、ナチスが政権を獲得した年です。


19世紀後半から20世紀前半というのは、科学の転換期間でした。ダーウィンが進化論を世に知らしめた『種の起源』の出版は1859年ですが、アメリカで進化論裁判が起きたのは1925年です。また、絶対環境としての「エーテル」の存在が信じられ、その存在を否定したのは1905年のアルバート・アインシュタインの特殊相対性理論でした。しかし、この相対性理論もまた、なかなか受け入れてもらえず、別名目でアインシュタインがノーベル賞を受賞したのは1922年のことです。


1920年代というのは、進化論と相対性理論がようやく受け入れられた時代と言えます。


本書のタイトルにある「生物から見た世界」、これは訳者の意訳で、元のドイツ語はUmwelt、これを日本語に直訳すると「環世界」となるのですが、これは生物を主体として捉え、まわりの環境はすべての相対的なものであるというのが「環世界」の概念です。進化論と相対性理論が受け入れられたこそ、ようやく「環世界」の概念に行きついた、そう私は理解しました。



環境とは相対的なもの

生物はそれぞれが自分の周りの環境を認識しています。環境とは絶対的なものではなく、主体に対して相対的なものであり客体です。主体が変われば客体も変わります。見る者の立場によって、見え方が異なります。


本書では、ダニ、イエバエ、ウニ、貝などがどう環境を捉えているかを論じます。


目のないダニの環世界

ダニは、目がありません。寄生先の動物を視覚的に捉えることができません。ではどうするかというと、「匂い」です。しかし人間の目の解像度と異なり、ダニの嗅覚の解像度は怖ろしく低いと思われますが、それでも動物に寄生するには十分です。ダニは木に登って待機し、動物の匂いが匂ったら、飛び降りるとのことです。着地に失敗したらそれまでですが。


複眼のハエの環世界

ハエの複眼について。子どものころ、昆虫の複眼を拡大すると、キラキラと瑠璃色に光って、この小さな生き物は人間の知らない世界を見ているに違いないと空想したものでした。そして、その空想は正しかったのですが、キラキラと輝いている印象と違って、昆虫は人間と比べてかなり近眼でかつ解像度が極めて低いのです。


たまたま併読していた『つながる脳科学』に、人間のニューロンの数が1000億に対し、ショウジョウハエのニューロンの数はわずか10万とのこと。視神経の数が極めて少ないのです。


ハエは50㎝以上遠くは見えなく、その限られた複眼神経では糸の細さを見ることができません。高速で襲い掛かるハエ叩きも、網の目のクモの糸も、ハエには見えないのです。あぁ、昆虫はなんたる不鮮明な世界で生きているのでしょうか。見るための視神経が備わっていないのです。


トンボの複眼
トンボの複眼
via 複眼と単眼 - Wikipedia (license CC BY-SA)



人間

同様に、人間も人によって見え方が異なります。子どもは大人より視野が狭いため、交通事故に遭いやすいです。赤ん坊もやはり遠くは見えないため、顔を近づける必要があります。本書に書かれてはいませんが、読書会では男女によって色彩感覚が違うのでは?という意見もありました。


環世界と自然淘汰

それぞれの生物は、それぞれ固有の環世界を有しています。それは、その生物が生き残るために必須の環境認識であり、それ以上でもそれ以下でもありません。動物に吸血するダニは動物の匂いに反応し、昆虫を捕食する鳥は昆虫に反応します。見えないのに匂いも分からないようなダニはとっくに滅んでいるでしょうし、昆虫を捕まえられない鳥も滅んでいるでしょう。


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