自粛ムードの萌芽が少しずつ見られます。

自粛は危険です。なぜなら、自粛は社会の破壊をもたらします。

小さいうちに、少しでもその芽を摘み取っておくべく、

この記事を書くことにしました。


空気・同調圧力・集団浅慮

このような状況下での自粛のムードですが、

別の言い方をすることもできます。

  • 空気を読む
  • 同調圧力(Peer Pressure)
  • 集団思考・集団浅慮


集団思考というのは、集合知(wisdom of crowds)の原理です。集合知というのは、『「みんなの意見」は案外正しい』で有名になりました。


集団思考がポジティブに作用すると、『「みんなの意見」は案外正しい』になるのですが、時にネガティブに作用すると、集団浅慮になります。みんなの意見を集約した結果、間違った結論を導き出すこともあります。具体的な事象は以下の通り。


いじめやデマは、自粛ムードと同じメカニズムで生じます。


「空気」を読んでしまうがゆえに同調圧力に弱い日本人

理性的に考えれば、その意思決定は間違っているはずなのに、その渦中にいる時は、合理的に選択してしまいます。そのような同調圧力がかかり、空気を読んでしまうからです。集団の暴走です。


とかく、日本人は、同調圧力に弱いです。社会学者の山岸俊男氏が、日本・アメリカ・中国との比較研究調査から、明らかにしました。

日本人は個人としての他人を信頼できないので、他人を信頼しなくてもすむ安心社会を作ってきた、そして安心社会に定住することで、他人を信頼できるかどうかを見極めるための社会的知性を十分に育成してこなかった。

安心社会では信頼が生まれにくい。


日本は、同町圧力に負け、日米開戦に踏み切り、取返しのつかないほどの大きな敗北をしました。同調圧力が、いじめを生み、デマを発生させ、日本全体を誤った戦争へと駆り立ててしまったのです。


だから私はこう言います。

同調圧力にNOと言う勇気が必要だと。


理性崇拝は何をもたらすか


空気を読み、同調圧力の渦中にいる人は、良かれと思って同調しているわけですが、誤った方向へ暴走し始めた時、止めることができません。「地獄への道は善意で舗装されている」と言われる所以です。


ピーター・ドラッカーは、彼の二つ目の著書『産業人の未来』(はじめて読むドラッカーシリーズの『イノベーターの条件』に収録)で、「理性崇拝は何をもたらすか」と問いかけます。アメリカ独立戦争とフランス革命は似て非なるものと断じ、フランス革命・ナチス・ドイツ・日本の軍国主義を同列に扱い、理性崇拝がもたらしたものと断罪しています。(7年前に、ドラッカーの『イノベーターの条件』を読んだ時、抽象的過ぎてなかなか腹落ちできなかったのですが、今から振り返ると、ドラッカーの言わんとしていることが実によくわかります。)


本人が自ら自粛するのは構いません。

しかし、他人に自粛を求めないで欲しい。


善意で言っているのかもしれない。

正義のつもりかもしれない。

理性で判断しているつもりかもしれない。


しかし、その善意・正義・理性が社会を破壊してしまったことを、20世紀の戦争は示しています。


それと比べれば、「自粛」は些細なことかもしれませんが、自粛は、単に経済活動の低下を招くだけでなく、社会を委縮させ、閉塞させてしまいます。社会が死にます。


自粛の正体

それに、一体、被災者は自粛することを求めているのでしょうか?被災者以外の人たちが、被災者の気持ちを忖度して述べているようにしか聞こえないのは、気のせいでしょうか?


熊本地震の避難民は10万人前後です。亡くなった方は100人以下です。報道の中心になっているため、どうしても目につくわけですが、目のつかないところ、気づかないところで、それ以上の人が亡くなり、それ以上の人が困っています。


日本だけで、毎日何千人という人たちが亡くなっていきます。生活に困窮し、生活保護を受けている人は、日本に200万人以上います。しかし、我々は普段の生活の中で、亡くなった人や困窮している人を慮って自粛することはありません。


もし、本当に、亡くなった人のことを慮る必要があるなら、生き残っている者の務めは、しっかりと今を生きることではないでしょうか?


つまり、こういう言い方をすることができるかもしれません。


自粛、自粛という人は、自分の人生を生きていないと。

それが自粛の正体だと、私は考えます。


今を生きること、そして社会をより良くすること

人に自粛を求めるよりも、震災後の日本でどう生きていくのは、自分に問うて欲しい。


自分の人生を生きている人は、安易に人に自粛を求めることはありません。

自分の人生を生きている人は、安易にデマに惑わされません。

自分の人生を生きている人は、流行を追いかけません。

自分の人生を生きている人は、いじめに加担しません。


自分の人生を生きている人が増えれば増えるほど、

社会は一歩ずつより良くなっていきます。


そう願ってやみませんし、そのための努力を惜しみません。


関連書籍・関連リンク

山本七平氏の代表的著書。Amazonレビューを見るとネガティブ評価もあります。根拠が薄いのではないかと・しかし、本書の原著は1970年代。2000年代以降進展が見られた社会心理学により、山本七平氏が評した日本人の同調圧力への弱さは、既に実証されています。


リスクに背を向ける日本人 (講談社現代新書)
山岸 俊男, メアリー C・ブリントン
講談社 ( 2010-10-16 )
ISBN: 9784062880732

日本での社会心理学の第一人者が、おそらくこの山岸俊男氏です。社会心理学は、社会の成り立ちを理解するのに、大変有効だと思います。学校教育のあり方、企業組織のあり方、政治のあり方を考える上で、役に立ちます。大学の教養課程や社会人教育に必須教養として取り上げてほしいほどです。


社会のあり方を研究した第一人者と言えば、やはりこの方を置いて他にありません。


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執筆・推敲時間:1時間23分



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