photo credit Arnaud Titoy via 読書 - Wikipedia (license : CC BY)
<目次>
- はじめに
- 第1章 「社会性」を身につけるために
- 第2章 「心の支柱」を見つけるために
- 第3章 「愛」を感じるために
- 第4章 「知識」を戦力に変えるために
- 第5章 「命」の尊厳を知るために
- 第6章 「心」の成長をうながすために
- 第7章 子どもに読ませたい本
- あとがき
- 獄中読書記録
本を読む理由
私はもちろん殺人を犯したことはありません。刑法犯で逮捕されたこともなければ、刑務所に収監されたり留置所に拘留されたこともありません。私は、私以外の何者かの境遇や信条を容易に推し量ることはできません。
だから私は本を読みます。
私以外の、私の経験したことのないことを経験した人の本を。
そこには私には未知なる視点、未知なる世界観がきっとあります。
著者・美達大和氏
本書の著者、美達大和氏は、殺人犯です。2人を計画的に殺害しました。無期懲役判決を受け、凶悪犯罪者だけが収監されるLB刑務所に収監されています。美達大和氏というのは、もちろんペンネームです。本名は分かりません。本書執筆時点の2015年で56歳とのこと。20数年前の殺人事件の犯人ですが、一年の間に殺人事件は数百件起きていますので、美達氏が誰かを特定するのは無理があります。しかし、それはどうでもよいことです。
美達氏の『人を殺すとはどういうことか』によれば、凶悪犯罪者というのは、概して、知能指数が低いとのことです。事件を起こした結果、自分にどんな災難が起きるかを想像できない人たちだそうです。そういう点で、美達氏というのは異例です。月刊読書量は100冊に及びます。その圧倒的な読書量による高い文章脳力が、『人を殺すとはどういうことか』や美達氏の別の著書『 女子高生サヤカが学んだ「1万人に1人」の勉強法』によく表れています。そして本書で彼のベスト42冊を提示します。
読書で得られるもの
読書の醍醐味の一つに、新しい本との出会いの中に、過去の本が投影され、その時を回顧できたり、関連のない情報がつながる喜びがあります。その瞬間のときめきは、何とも言えません。 (P114)
ふと、本書のいくつかのフレーズを読んで、ヴィクトール・フランクルの名著『夜と霧』を思い出しました。まさに、過去の本が投影され、つながる瞬間です。『夜と霧』は、ナチス・ドイツのホロコーストのような絶望の淵にある人たちが生き残る条件を提示しています。勇気と希望を持ち、生かされていることを感謝している人は生き延び、そうでない人たちは絶望のうちに亡くなりました。
美達氏は無期懲役囚です。20年以上も収監されます。自ら犯した殺人を振り返り、客観視し、反省の上で(本人は安易に反省しているとは言いませんが)冷静に語るその口調に、精神的タフネスを垣間見れます。どのようにそのような精神的強靭さを得たのでしょうか?ここまで読み進んでいただいた方はお判りでしょう。それは、本書のまえがきやコラムの彼の言葉に裏打ちされています。
そして、読書で得られるもの
「時間=命」です。たとえ獄内であろうと、読書の時間は自分の境遇を忘れて過ごせます。私にとって読書は生きることと同義なんだと思い知らされました。このように育ててくれた母に感謝しています。 (P52)
産み育ててくれた母親への感謝。まさにこの世に命をうけ、生かされていることに対する感謝ではありませんか。
本書では、1冊の本と出会うことで、気力・勇気・知恵を得て、自分を肯定できる、あるいは再発見できる書を、また精神のあり方や生き方に変化が起こるような、刺激を与えてくれる書を選んでみました。 (P8)
これはまさに、美達氏ご自身のことではありませんか。読書で気力・勇気・知恵を得たと。
関連書籍
美達大和氏の著書
美達氏の殺人手記。この本と出会ってしまったことにより、私は他の殺人犯の本、被害者の本を読むことになる。
美達氏のもう一冊の著書。
他の殺人犯の本、被害者の本
- 【書評】『殺人犯との対話』(その1)~本書を読む意味、そして殺人犯に共通している部分 : なおきのブログ
- 【書評】『殺人犯との対話』(その2)大阪2児虐待死事件と福岡一家4人殺人事件 : なおきのブログ
- 【書評】『絶歌』~少年Aの慟哭と「どうして人を殺してはいけないのですか?」という問いに対する答え : なおきのブログ
- 【書評】『謝るなら、いつでもおいで』~佐世保小6女児同級生殺害事件~ : なおきのブログ
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