<目次>
  • 第1章 意識の不思議
  • 第2章 脳に意識の幻を追って
  • 第3章 実験的意識研究の切り札 操作実験
  • 第4章 意識の自然則とどう向き合うか
  • 第5章 意識は情報か、アルゴリズムか
  • 終章 脳の意識と機械の意識


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著者は、「宇宙」の神秘を探るよりも、「意識」こそが人智の限りを尽くしてでも取り組むべき課題としています。


かつて、人工知能学者の三宅陽一郎氏が、「我々人類は『人工知能』を語る以前に『知能』を知らない」と言いました。言い換えると「私」という「意識」はいったいどこにあるのか?という命題です。それが本書の深淵なるテーマです。


現代の脳科学者の共通見解として、「意識」はニューロン活動の産物であることは間違いないとのことです。しかし、ニューロンを一つ一つ紐解いていっても、どこにも「意識」はありません。


肝心なのは(中略)脳のどこにもブラックボックス(未知の仕組み)が隠されていないことを実感してもらうことだ。ブラックボックスがないのに意識が宿る、これこそが衝撃なのだ。



「私」はどこにいるのか?
脳のニューロン細胞
credit : MethoxyRoxy via 脳 - Wikipedia(license :CC BY-SA)

創発

このことを読んで、私は「創発」を思い出しました。「創発」とは、Wikipediaの説明によると「部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れること」のことです。ニューロン一つ一つにはどこにも存在しない「意識」が、ニューロンの集合体である脳には明らかに存在します。


「創発」を理解するには、『暗黙知の次元』と『〈インターネット〉の次に来るもの』の二冊がお薦めです。『暗黙知の次元』では、部分と総和の対比として、物理学と都市設計、発声と文学作品、発生学と人間道徳を例に著しています。


【書評】『 暗黙知の次元』「私たちは言葉にできるより多くのことを知ることができる。」 : なおきのブログ

「知識」「ナレッジマネジメント」系の基礎的な本は何だろう?と思いを巡らせてみたところ、まっさきに思い出したのが、『思考の整理学』とこの『暗黙知の次元』です。本書で一番琴線に触れたメッセージの一つが、この「暗黙知」の定義です。

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また、『〈インターネット〉の次に来るもの』では、トランジスタとニューロン、インターネットと人間の脳を対比させると、人間の脳を構成するニューロンの数の1兆倍のトランジスタがインターネット上に存在しているとのこと。ニューロンの総和である脳に「意識」があることを考えると、近い将来、トランジスタの総和であるインターネットが「意識」を持つことをありうるとしています。つまり「シンギュラリティ」です。


【書評】『〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則』その8(シンギュラリティ) : なおきのブログ

インターネット上のデバイス(パソコン、携帯電話、スマートフォン、センサーその他)は、すでに150億(10の10乗)を超えたとのことです。5年後、10年後には一体、何倍に膨れ上がっているのでしょう?この様相を、著者のケヴィン・ケリー氏は「始まっていく」ものとして、BEGINNINGと名づけています。この人間の脳を超えた臨界点を「シンギュラリティ」と呼びます。

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感覚意識体験=クオリアと環世界

そして本書では、「意識」を「『見える』『聴こえる』などの感覚意識体験、いわゆる『クオリア』」と定義しています。我々が見ている光の三原色で構成された世界は、実は脳が都合よく作り出したものに、この世の世界には色は存在しないとしています。なぜなら、色の正体である可視光線は電磁波の一種に過ぎず、現実世界は「電磁波の飛び交う味気ない世界」としています。


なぜなら、人間以外の哺乳動物は、色の識別を行う錐体細胞が二種類しかなく、「赤+緑=黄」や「緑+青=シアン」といった色の認識ができないとのこと。


この話を読んで、この着想は1930年代に生物学者ユクスキュルが提唱した「環世界」のことだと気づきました。視神経を持たないダニは嗅覚のみで寄生すべき動物を識別し、視神経は持っていても人間と比べて圧倒的に視神経細胞の少ない昆虫は、人間と比べれば圧倒的に解像度の悪い世界で生きており、細いクモの巣の糸を識別することができません。人間であれば避けることができるクモの巣を、チョウや蛾は避けることができないのです。


【書評】『生物から見た世界 (岩波文庫)』 : なおきのブログ

本書との出会いは、三宅陽一郎さんが進行役を務められた「『人工』知能と知能を考えるための61冊」を読む #2。彼がその61冊の中で真っ先に紹介している本です。人工知能を考えるには、まずは生物を知ろうということだと思います。

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以上、まえがきと第1章についての書評です。本書の書評は長くなりそうです。


つづく。


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