<目次>
- はじめに
- 1章 ニッポン一億総活躍プランが「気持ちが悪い」のはなぜか?
- 2章 長時間労働はどうすれば是正できるのか
- 3章 日本の労働生産性はなぜ低いのか?
- 4章 少子化は本当に悪いことなのか?
- 5章 日本社会の強みと弱みは何か?
- 6章 私たちはどんな「働き方」を目指すべきか?
- おわりに
本書は、教育ジャーナリストのおおたとしまささんと、労働問題に詳しい常見陽平さんの対談本です。
世に言う「働き方改革」というバズワード、正直、眉唾ものだと思っています。
- 人口減少に備え、女性を労働力化したい政府の思惑
- 政府に迎合して「働き方改革」を大合唱する大企業
- 大企業に「働き方改革」グッズを売りつけたい企業
の三つ巴の戦いです。
本書を読んで、「なるほど」、そうだよな」と強く感じたのが二点。
メンバーシップ型雇用慣行
またの名を「終身雇用」とも言います。IT業界に身を置いていると、ざっくりと半分ぐらいは転職経験があり、半分ぐらいが未経験です。おそらく非正規雇用が多数を占めるサービス業(飲食や介護など)ではもっと比率が高く、伝統的な業界、製造業・銀行・公務員などは、転職比率はぐんと下がると理解しています。
それを別の切り口で、常見さんが分かりやすく指摘しています。
常見:メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用にシフトさせたい動きはありますが、今もって、日本は過剰なメンバーシップ型から抜け出してはいません。一方で、非正規雇用では過剰なジョブ型が済んでいます。 (P154)
メンバーシップ型雇用慣行の強い企業は、職務や権限が曖昧で、すり合わせしながら仕事をしているのではないでしょうか。手間がかかりますが、顧客や世間に迷惑のかかるようなポテンヒットも起こしません。私が知っている某公共企業の震災時の俊敏な対応は感動ものです。
つまり、海外を感動させた震災時の日本人の態度にマッチしているのが、メンバーシップ型雇用慣行です。メンバーシップ型雇用慣行の企業が、紋切り型のジョブ型へ移行する可能性は低いように感じるのですが。
正規雇用 対 非正規雇用
もう一つの問題がこれです。
おおた:働き方改革はやはり、正規雇用者メインの話ですよ。労働者人口の4割を占める非正規雇用者にとっては、他人事じゃないですか。 (P155)
これ、実際にそうで、IT業界に身を置く私はつくづく恵まれていると感じます。充実した育児介護休暇制度、全社員対象のテレワーク制度などです。
私の妻は日本を代表する大企業に非正規雇用で働いていますが、本社ではなく人数の少ない支店だからかもしれませんが、話を聞く限り、前近代的な労働慣行がまかり通り、非正規にもかかわらず柔軟な働き方さえできません。私でさえ、びっくりします。
非正規雇用の人に働き方改革の恩恵はない、というのは身をもって実感している最中です。
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